2018年08月25日

忘れ物をしたら

忘れ物をしたら試合に出られない。届けるのが親の愛情じゃないか問題。


<サッカーママからの相談>

少年団チーム指導者の厳しさについて悩んでいます。
息子は小学4年生です。

とある公式試合の決勝戦が行われる日。
チームで一番上手くて
選抜にも選ばれるような子が
寝坊して遅刻した挙句
レガースを忘れてきました。

監督ではないボランティアコーチの方が
その子に対して
「準備と意識が足りていない。
今日の決勝は出なくていい。
ベンチではなく観客エリアで見学しなさい」と
厳しく突き放しました。

このコーチは普段から、
「サッカーをするのは自分なんだから、
サッカーに行く準備は自分ですること」と言い、
私達保護者にも
「例えお子さんが忘れ物をしていると気付いても、
手を貸さないで下さい。
忘れたまま行かせて下さい」と
お願いをされてました。

結果、試合にはボロボロで負け、
寝坊と忘れ物をした子は
チームメイトから文句を言われ、
帰ってから泣き続けてたそうです。

コーチの指導方針は分かります。
賛同できる点もあります。

ただ、忘れ物や寝坊に気付いた親が、
それをリカバリーするための行動をする事が、
そんなに悪い事なのでしょうか?

まだ小学4年生の子どもですし、
失敗を経験しながらも、
その失敗をリカバリーするための
フォローをする親の愛情を
感じさせてやるのは間違いでしょうか?


一度、そのコーチに
それとなくその時の話をした時、
コーチからは
「保護者の方々は
褒めるか慰めるかだけにして下さい。
子どもが自分で考えて答えを導き出す事を
待ってあげて下さい。
待って見守ってやる事が我々大人の仕事です」、
「それに負けた事を
1人の選手のせいにしている子ども達にも、
考えてもらう良い機会なので
放置して下さい」と言われました。


小学生に対して
少し厳しい気がするんですが違いますか?
これが良い指導...となるのでしょうか。
私にはよくわからなくて。

やはり監督さんに相談した方が
良いのでしょうか?




はい、皆さん、どう思われますか。


スポーツと教育のジャーナリストであり、
先輩サッカーママでもある島沢優子さんが、
ジャーナリストとしての知見や
ご自身の経験を通して、アドバイスを送ります。




<島沢さんのアドバイス>

ご相談、ありがとうございます。
本当に良いご相談をしてくださいました。
心から感謝します。

「ようやくまっとうなコーチが現われ始めた!」
ご相談の文章を読んで、
心から嬉しくなりました。

なぜなら、暴力指導や暴言といった
困ったコーチの相談も舞い込みますが、
発覚の背後には
似たようなことが
その数十倍隠れていると言われています。
今回は、良いコーチの例ですが、
こういった方がひとりいるということは
きっと数十倍いるのかもしれません。
とにもかくにも、少しずつ少年サッカーが
変わり始めている好例だと受け止めました。

これが良い指導...となるのでしょうか? と
疑問視されているお母さんからすれば、
きっと「はあ?」って感じですよね。
いいんです! 
これこそ、少年サッカーの見本となる指導です。


お母さんがお子さんに
サッカーをやらせているのはなぜですか?
サッカーをするなかで
成長してほしいと思われていませんか?
ここからは、
子育ての目的が
「未来につながる子どもの成長」と
考えたうえでのお話しです。


■厳しいと感じるかもしれないけれど、
間違った指導ではない

コーチの方のおっしゃることは、
子育ての本質を見事に射抜いています。

「寝坊して遅刻した挙句に
レガースを忘れた」選手に対し、
「今日は準備不足だったね。
試合に出る資格はないね。
今日はあきらめよう」と諭すのは
決して間違った指導ではありません。
そして、そのようなペナルティを
前半だけにするのか、
1試合まるごと出さないかは、
それまでの子どもの姿や取り組みを踏まえて、
コーチそれぞれが考えて決めるものでしょう。


仮にチームのエースでなかったとしても
同じことです。
このことで、
この選手は二度と忘れ物をしないばかりか、
サッカーへの取り組みがきっと変わるでしょう。
つまり、コーチの指導は、
子どもの成長を促すことになります。


■子どもは失敗を経験することで成長する

しかも、このコーチは指導方針
(というかチームのマネージメント方針)を、
あらかじめお母さんたち保護者に
伝えています。
忘れ物に気づいても
手を貸さないようにと釘を刺しています。


なぜなら、
忘れ物をしても親に届けてもらえる子どもは、
永遠に準備を怠ります。
サッカーに限らずすべてのスポーツは
「いい準備をする」哲学を
子どもの頃から叩きこんでおく必要があります。
準備の重要性は
失敗して学んでいけばよいのです。

それに人は失敗をして、
苦い思いを味わうことで成長します。
手ではなく足でプレーするサッカーは
「ミスのスポーツ」とも言われますね。
そもそも一度も負けずに、ミスもせずに
大きな人間になることなどあり得ません。
事をなした人ほど、
大きな失敗から立ち直っています。


つまり「忘れ物を届ける」という親の行動は、
一見
愛にあふれたほほえましいものに映りますが、
実はわが子の成長を奪っているわけです。

「失敗をリカバリーするためにフォローする
親の愛情を感じさせてやるのは間違いか」と
ご質問されていますが、
それは正しい愛情でしょうか?


■親も失敗から学べばいい、
大事なのは「正しい愛情」で接すること

私は、親がもつわが子への愛情には
「間違った愛」と「正しい愛」という両極にある
二つの愛があると考えています。
過日、文部科学省の幹部が東京医科大に
自分の息子を裏口入学させたことが発覚しました。
恐らくわが子可愛さでしょう。
が、これは間違った愛情です。
推測にすぎませんが、
失敗するわが子を見たくなかった、
もしくはご自分のプライドが
不正に手を染めさせたのではないでしょうか。

正しい愛情は、わが子を信じて見守ること。
物事の本質を
見極められる年齢になった子どもたちは、
自分の失敗を怒らず、笑わず、
黙って見守ってくれた
親の正しい愛情に心から感謝します。

それとは逆に、
私たちがインタビューするトップアスリートに
「子どものころから
いつも忘れ物は親に届けてもらっていました」と
親に感謝する人はほぼいません。

目の前で失敗する子どもの姿を見るのは
親として辛いものかもしれません。
人生であまり失敗をしてこなかった親御さんほど、
わが子の失敗が恥ずかしく、見ていられず、
つい手助けしてしまう。
逆に、失敗の多かった方は、
優秀な子どもに
自分の人生の敗者復活戦を望みます。

手助けも、敗者復活戦も、
傍で見ていて
気持ちのいい子育てではありませんよね。
たまに、自分の子育てを
他人になって眺めてみてください。
難しければ、
誰か心の許せる人に尋ねるといいでしょう。
そうやって歪みを見つけては直していく。
それが親としての成長です。
私たちもまた、失敗から学ぶのです。

このコーチは
お母さんがこの忘れ物事件について
質問をした際も
「子どもが自分で考えて
答えを導き出す事を待ってあげて下さい。
待って見守ってやる事が
我々大人の仕事です」と
きちんと答えています。

今の日本のスポーツ界は、
指導もマネ―ジメント方法も
新しいものに移行する過渡期です。
だからこそ、さまざまな不祥事が
随所で起きています。
そのなかで、
質の高い大人にめぐり合う確率は
そんなに高くありません。

お母さん、
本当に良いコーチに
めぐり合いましたね。
おめでとうございます。
できれば、お母さんたちは
一度「なぜ忘れ物を届けてはいけないのか?」を
保護者同士で話し合う機会を設けるとよいでしょう。



はい。
忘れ物、届けなくて大丈夫です。
子ども達の成長のため、
よろしくお願いします(*´▽`*)
maruhashikouta at 09:06│Comments(0)指導 | 教育

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